歴史群像 2014年 02月号 [雑誌]

第一特集は日本海軍の砲戦能力の検証を、太平洋戦争において昼間に発生した３つの海戦、スラバヤ沖海戦(昭和１７年２月)、アッツ島沖海戦(昭和１８年３月)、サマール島沖海戦(昭和１９年１０月)にて行う。最初の２つの海戦の旗艦はくしくも那智と共通しており、それ以外にも「艦これ」ファンにはおなじみの艦船群が多数登場する。海戦の推移(両軍の駆け引き)も詳しくたどっており読ませる。いずれの海戦も緒戦の砲戦距離は２万メートル超となっているが、仮に２万メートルだとすると東京駅と鶴見駅間で互いに高速艦隊運動を行いながら撃ち合っているようなもので、砲弾を命中させるなど神業といっていいかもしれない。「艦これ」ファンにはエンガノ岬沖海戦をアメリカ軍側の視点でとりあげた記事もおもしろいだろう。瑞鳳がゲーム中、触れている小沢機動部隊による壮烈な囮作戦だ。これにより連合艦隊は瑞鶴、瑞鳳、千代田、千歳という稼働可能な全ての航空母艦を失う・・。海軍つながりでいけばもうひとつ、兵士の方のインタビュは、レイテ沖海戦時、武蔵乗組の方をとりあげている。主砲射撃用のデータを計算するため、砲塔近くに巨大な機械式計算機が設置されていたという・・・。太平洋戦争後半の米海兵隊のイメージに隠れてしまい、日本陸海軍も同様に有数の上陸能力を持っていたことはなかなか気づかないが、「日本の水陸両用戦部隊史」は着眼点も含めおもしろかった。大発や、二等輸送艦なども登場する。日本海軍絡みの記事ばかりのとりあげたが、他には、第二特集は「ラインの守り」作戦時(いわゆるバルジの戦い)のドイツ空軍の戦いをとりあげた。大河ドラマつながりで黒田官兵衛孝高をとりあげた記事、ノルマンディ作戦時のドイツSS第１０２重戦車大隊の記事もそれぞれおもしろかった。珍しいところでは、日露戦争時旅順攻略で名を馳せた２８センチ砲の顛末を描いた記事、太平洋戦争前後のタイ王国軍の記事など。全体に捨て所がない良記事の多い号だ(歴史群像は毎回そうだが)。